【世界遺産】ビキニ環礁核実験場の観光ガイド：マーシャル諸島屈指のダイビングの名所

■マーシャル諸島共和国、太平洋に浮かぶ真珠の首飾り

ビキニ環礁のあるマーシャル諸島共和国は1990年12月22日にアメリカ合衆国から独立しました。首都はマジュロ環礁の中心、マジュロで、そこを中心にして、200万平方キロメートルの広い海域に29の環礁と5つの島で構成された国です。サンゴ礁の島の数は1200以上あり、島々が輪の形に並んでいることから、「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」と呼ばれています。

■環礁とは？

サンゴ礁は、形成された島の形によって、三つ種類に分かれます。裾礁（きょしょう）、堡礁（ほしょう）、環礁（かんしょう）です。裾礁は、海にできた火山島の周りにサンゴが広がっていってできたタイプ、堡礁は海岸から少し離れたところに作られるサンゴ礁で沖合サンゴ礁とも呼ばれるタイプ、そして、環礁は、その名前の通り、大きなリング形になって、サンゴ礁の真ん中が浅い海になったタイプです。

ビキニ環礁のあるマーシャル諸島に、世界最大の環礁クェゼリン環礁があります。クェゼリン環礁も軍事的意味合いで訪れる人が少なく、ビキニ環礁同様大自然が手付かずのまま残っています。動物であるサンゴが少しずつ堆積していき、島を作っていくことを想像すると、自然のミステリーを感じてワクワクします。

サンゴ礁は、気温が18度以上で形成可能ですから、亜熱帯ではなくても日本のあちらこちらで見られます。しかし、やはり温暖地方の方ができやすいので、日本の場合、小笠原諸島や沖縄に大きなサンゴ礁があります。サンゴ礁の周りは浅瀬になり、そこが白っぽいので、海の色がエメラルドグリーンになり、美しい風景を楽しめます。本格的なダイビングをしなくても、サンゴ礁は浅いところにも魚がたくさんいるので、シュノーケリングでも十分楽しめます。

■悲劇を繰り返さないための世界文化遺産

最初に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「世界文化遺産」。ミクロネシアのマーシャル諸島にあるビキニ環礁核実験地は、第二次世界大戦後にアメリカが原水爆実験を繰り返した実験場です。 1946年7月に実施された原爆実験「クロスロード作戦」では、日本海軍の戦艦長門をはじめ、大小71隻の戦艦を標的とする実験が行われ、当時沈没した長門は今も海底に眠っています。

1946年7月25日の原爆実験「クロスロード作戦」

1954年の実験では、近海を航行していた日本のマグロ漁船「第五福竜丸」など、約1000隻以上の漁船が被曝しました。ビキニ環礁から約240km離れたロンゲラップ環礁にも死の灰が降り積もり、島民64人が被曝しています。海底のクレーターは、1954年に行われた広島の原子爆弾の7000倍の破壊力をもった核実験によってできたものです。その傷跡は、核使用の恐怖、核廃絶の必要性、そして平和への希望を語り継ぐべき“負”の世界遺産といえます。

©UNESCO/Eric Hanauer

ビキニ島にあるたてふには「MEN OTEMJEJ REJ ILO BEIN ANIJ」とこの地の言葉で「神の手のままに」と書かれています。強制的にアメリカ合衆国によって移転を強いられた時に首長が言った言葉です。
日本では「負の世界遺産」という言葉が使われていますが、ユネスコでは負の世界遺産という概念は実は存在しません。しかし、歴史の負の部分を忘れないために、その記念碑として選ばれていることは間違いありません。

ビキニ環礁に住んでいた人々

次に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「ビキニ環礁に住んでいた人々」。写真はビキニ環礁の衛星写真です。水面は黒く写っていますから、島が輪状態に連なっていることがわかります。輪の部分は、23の小さな島で形成されています。環礁は真ん中の海の部分が浅く、魚が集まりやすかったため漁業も簡単で、当時170人の人々が住んでいました。
ところが、核実験を行うために強制的に移住させられ、無人島のロンゲリック環礁、その後、基地のあるクェゼリン環礁から無人島キリ島へと1ヶ月の間に転々とさせられました。特にロンゲリック環礁では、水と食料が不足し、飢餓にも悩まされたそうです。

原爆・水爆実験、日本人の犠牲者も

3番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「原爆・水爆実験、日本人の犠牲者も」。1948年から1956年にかけて、原爆及び水爆実験が20回以上繰り返されました。その間、日本の漁船「第五福竜丸」に乗船している23名が被曝するという事件が起きました。アメリカが水爆の威力を過小に計算したため、被曝する可能性がある地域の特定が小さすぎたためです。この事件から半年後に無線長だった久保山愛吉（くぼやま あいきち）がC型肝炎で死亡し、2004年までに23名中、12名が死亡しています。死因は、肝癌6名、肝硬変2名、肝線維症1名、大腸癌1名、心不全1名、交通事故1名でした。そのほかの生存者にも、肝機能障害が発見されています。

ビキニ環礁の現在：人気ダイビングスポットに

4番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「原爆・水爆実験、日本人の犠牲者も」。現在、実験による放射能汚染は、短期間の滞在では問題のないレベルで安定していると発表されています。そして、多くの戦艦が海底に眠る、世界でも類を見ないレック（沈船）ダイビングのスポットとして、世界中のダイバーの憧れの地となっています。「クロスロード作戦」に標的艦として投入され沈没した戦艦長門は、上下逆さまの状態で水深約50mの海底に横たわるように眠っています。

■ビキニ環礁核実験場へのアクセス

難易度：★★★★☆（行くならショップ利用がおすすめ）

5番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「アクセス」。マジュロには国際空港、マジュロ・インターナショナル・エアポート（Majuro International Airport）、別名、アマタ・カブア・インターナショナル・エアポート（Amata Kabua International Airport）があります。日本からの直通はありません。ユナイテッドでグアムまで行き、グアムで乗り換えます。

マーシャル諸島共和国入国審査

6番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マーシャル諸島共和国入国審査」。マーシャル諸島への入国には30日以内の滞在であれば、ビザは必要ありません。入国した際にその場で30日間のビザが無料で渡されます。移民局に申請すると、90日間まで延長も可能です。ただし、パスポートの有効期限が6ヶ月以上あることが条件になります。出国の際に20米ドルが必要になるので、用意しておきましょう。

マジュロからビキニ環礁への行き方

7番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マジュロからビキニ環礁への行き方」。マジュロからビキニ環礁空港へは、国内線でマーシャル諸島航空（Air Marshall Islands)が運行していますが、便が少なく休航も多いので、注意が必要です。空港からビキニ島までは、モーターボートで30分です。
宿泊施設、キッチンを完備したマリンレジャーボートは8人乗りと16人乗りがあり、ダイビングやフィッシングツアーに利用されています。特にビキニ環礁にいくボートでは、ビデオでビキニ環礁の歴史が見られ、核の恐ろしさを学べるようになっています。

インディーズ・トレーダー Indies Trader

また、日本人経営のMJCCはもともと日本とマーシャル諸島間でコンクリートなどの工業製品の輸出入をしている会社ですが、マーシャル諸島の旅行に関する相談も受けています。常に日本人スタッフが対応できる状態ですから、困ったときのために電話番号をチェックしておくと良いでしょう。ホテルの予約やレンタカーの手配をしてくれます。日本の免許証で、マーシャル諸島で運転できます。

MJCC

■マーシャル諸島共和国での宿泊

8番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マーシャル諸島共和国での宿泊」。ビキニ環礁は、原水爆実験から50年以上たち、原爆の影響も少なくなってきたと言われています。サンゴ礁も80パーセント修復され、アメリカ合衆国の調査によれば、ビキニ環礁はすでに住める状態になったということですが、それでも、ビキニ環礁で採れる野菜類の搬出は認められておらず、そういう観点から未だに住んでいるのは、調査団の人たちだけのようです。未だにビキニ環礁のホテルは充実していません。

ですから、宿泊もモジュロやその周辺にし、ビキニ環礁へはツアーなどを利用して訪問するのがベストです。

マーシャル アイランズ リゾート

9番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マーシャル アイランズ リゾート」。マーシャルアイランズリゾートは、写真のように、海の上に建てられています。海の上にある建物は、湿気の多い地域に特有の建築方法ですが、水の上にあるために涼しく過ごしやすくなります。内部もアメリカンサイズの広々としたベッドで居心地がよく、ゆっくり休めます。スタッフも親切で、常に笑顔で接してくれます。空港へのお迎えも無料でしてくれるので安心です。

アメリカンタイプの食事から、郷土料理まで、海を見ながら食事ができます。地元料理は、主食にタロ芋や調理用バナナなどが使われますが、もちろん、アメリカンタイプのパンもあります。肉類は豚肉が主流で、あとは海産物になります。味付けにはレモンなどの柑橘類で酸味をつけ、塩やペパーであっさり仕上げ、新鮮な材料の味を大事にした料理が多いです。また、パッションフルーツやアボガドなどトロピカルフルーツも豊富です。

■マーシャル諸島の気候

10番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マーシャル諸島の気候」。マーシャル諸島は赤道より少しだけ北に位置するため、日中の日差しは厳しく、湿気もありますが、海から貿易風がふき、比較的過ごしやすい気候です。特に朝夕は涼しく感じることが多く、一年を通してほぼ27度くらいと安定しています。四季はなく、雨季と乾季があり、5月から11月が雨季になります。風も比較的強い地域ですが、6月に凪ぐのでダイビングには6月がベストです。

■マーシャル諸島共和国の言語や日常のこと

11番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「マーシャル諸島共和国の言語や日常のこと」。マーシャル諸島は最初にスペイン人によって発見されましたが、その後、放置され、のちにドイツ領になっていました。しかし、第一次世界大戦で勝利した日本がドイツから受け取り、日本領になっていた時期があります。その後、第二次世界大戦で日本がアメリカ合衆国に敗れ、アメリカ合衆国領になりました。1990年に独立しましたが、今でも公用語は英語と現地語であるマーシャル語、そして使用貨幣は米ドルです。

■ビキニ環礁の水爆実験といえば：人気怪獣・ゴジラの故郷

12番目に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「人気怪獣・ゴジラの故郷」。映画でおなじみの怪獣ゴジラは、頻発したビキニ環礁の水爆実験で発生した放射性物質を浴びて怪獣化した生物として生み出されました。核実験のモチーフとして、人類が自ら作り出し、自分たちを脅かす核兵器や放射能の恐怖の象徴として描かれています。

©UNESCO/Ron Van Oers

また、「ビキニ」の語源はマーシャル語で「多くのヤシの木」という意味です。自然豊かな美しい島で、米軍が行う原爆実験への抗議を込めて、フランスのデザイナーが新作水着にビキニと名付けたという逸話も残っています。

■世界遺産ビキニ環礁へボートに乗って行こう！

最後に紹介するビキニ環礁核実験場の情報は「世界遺産ビキニ環礁へボートに乗って行こう」。ビキニ環礁へは、宿泊施設の整ったボートで行くのが一番確実な方法です。ビキニ環礁だけではなく、マーシャル諸島は美しい自然がたっぷり残っていますから、ぜひ、のんびりとした休日を過ごしに行って欲しい場所です。