特定調停とは？｜メリットやデメリット、手続きの流れを解説

何かの理由で借金を抱え、その返済ができずに悩んでいるという人は少なくありません。しかし、借金は悩んいるだけでは解決できず、返済できずに悩んでいるうちに借金はどんどん増えていく結果に。そんなとき、借金返済の悩みを解決してくれるのが債務整理という制度。しかし債務整理はさまざまな方法があり、実際によくわからないというのが現状です。
そこで今回は、債務整理の中でも、特定調停について詳しく見ていきたいと思います。特定調停は裁判所による手続きとなり、手続きすることで借金の返済額が少なくなることも。まずは、自分に合った制度をみつけるために「特定調停」とはどんな制度なのか、メリットとデメリットも見ていきましょう。

特定調停とは？

特定調停とは、借金の返済が難しい債務者が申し立てることで、簡易裁判所が借主と貸主との話し合いを仲裁し、借金を整理して生活を立て直せるよう支援する制度のこと。特定調停では、借金をした当初にさかのぼって利息制限法の上限金利（15～20％）による引き直し計算を行い、その計算で減額された元本をもとに分割して返済していくようにします。ここでは、特定調停についての基本的な知識について説明していきたいと思います。

特定調停を利用できる人

特定調停は借金返済が滞った人にとっての助けとなる制度です。借金返済で悩んでいる方は特定調停の制度を利用したいと考えるでしょう。しかし特定調停はだれでも利用できるわけではありません。特定調停は、基本的に「減額後の借金が3年程度で返済できる金額の方」そして「継続して収入を得る見込みがある方」とされてます。各簡易裁判所により運用が異なる場合がありますが、誰でも対象になるわけではないということを理解しておきましょう。

特定調停の裁判所の関与の有無

特定調停は、民事調停法・特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律に基づき裁判所が行う裁判手続のひとつです。そのため、当然、裁判所が関与した手続きとなります。裁判所が関与するというのは法的効力がありますが、手続きが複雑で時間がかかることもあります。通常は、裁判所が選任した調停委員が当事者の間に入って話し合いを調整するという手続きが行われます。

特定調停と任意整理との違い

借金の返済で困ったときに利用できる制度として任意整理という制度があります。任意整理は、弁護士が債務者の代理人となって各債権者と和解交渉を行います。特定調停は、裁判所が仲裁役となって債務者と各債権者との和解の成立を支援する公的な手続で、ここが大きな違いです。ほかにも特定調停と任意整理には違いがありますので、特定調停と任意整理との違いを詳しくみていきましょう。

借金取り立て中止のついて

特定調停も任意整理も手続き中は借金の取り立てが中止します。しかし、任意整理の場合は弁護士に依頼すれば直ちに取り立てが止まるのに対し、特定調停の場合、実際に裁判所に申し立てをしない限り、取り立ては止まりません。特定調停の申し立ては特定調停申立書の作成や関係権利者一覧表・財産の状況を示す明細書が必要になり、取り立て中止までに期間がかかることが多くあります。

解決までの期間

特定調停と任意整理では解決までの期間にどの程度の違いがあるのでしょう。まず、任意整理の場合、弁護士が代理人として交渉・手続を行うため、時間や手間をとられることなく解決に進むというのが一般的。特定調停の場合、調停委員が仲裁に入りますが基本的には本人が各債権者と交渉することになります。さらに裁判所は土日祝祭日には開廷しておらず、期間が長引くことも。

費用についての違い

借金に関わる手続きをする場合、費用についてもかなり気になるところです。特定調停は原則として本人が各債権者と交渉することもあり、1社あたり500円で手続きが可能です。しかし任意整理は、弁護士が代理人として行うため、本人が時間をかけない分、費用が高くなります。依頼する弁護士事務所によって費用に違いはありますが、特定調停に比べて費用が高額になるのが一般的です。

特定調停のメリット・デメリット

借金の返済が滞り、自力で返済するのが難しくなったときは、さまざまな制度を利用することができます。もちろん、状況によって利用できる制度が違いますが、特定調停を利用できる場合はそのメリットとデメリットを理解しておく必要があります。どの制度もメリットとデメリットがあるので、しっかり理解したうえで、自分にあった制度を利用するのが大切です。では、特定調停のメリットとデメリットについて詳しく見ていきましょう。

特定調停のメリット

特定調停のメリットとしては、借金をした当初にさかのぼって利息制限法の上限金利（15～20％）まで金利を引き下げて再計算することで借金を減額することができるというところです。複数の場所から借金している場合、どの債権者と合意するのかを自由に選ぶことができるため、住宅や自動車ローンだけ残して特定調停をすれば財産を維持することも可能です。そして、裁判所に「民事執行停止の申立」を行うことにより既に行われている強制執行手続が停止できるというメリットも。

特定調停のデメリット

特定調停の最大のデメリットは、過払い金の返還を受けられないこと。特定調停はあくまでも利息制限法の上限金利（15～20％）に引き直して減額された借金をどのくらいの期間で支払っていくのかというものなので、過払い金があった場合は別途過払い金返還請求訴訟を裁判所に提起する必要があります。また、調停調書どおりに返済ができなくなった場合、直ちに給料の差押えなどの強制執行がされてしまう危険性があります。さらに、債権者が同意しないと調停が成立せず債務整理ができない場合も。

メリットとデメリットを考えて

特定調停のメリットとデメリットを考えると、まずは本人がある程度時間がある場合に利用するのがおすすめです。例えば仕事でなかなか時間がとれないと、特定調停の手続きが進まないことになります。ある程度の時間がとれ、費用をかけずに手続きしたい場合は特定調停がおすすめです。また、特定調停は、支払い能力がなければいけないため、特定調停を利用したあとも、しっかり借金返済ができる支払い能力がある場合に利用しましょう。

特定調停の手続きの流れ

任意整理は法律の専門家である弁護士などに依頼することで、自分が動かなくてもほとんどのことを弁護士が行ってくれます。しかし特定調停は、裁判所の調停委員が仲介に入ってはくれますが、自分で動かなければいけないことがたくさん。そこで、ここでは特定調停の手続きの流れについて見ていきたいと思います。特定調停の手続きをする場合は、できるだけスムーズに手続きが行われるよう手続きの流れを知っておきましょう。

申立書類の作成と特定調停の申立

まずはじめに、特定調停の手続きをしようと思ったら、特定調停申立書・関係権利者一覧表・財産の状況を示す明細書等の必要書類を作成します。これはすべて本人で準備しなければいけません。これらの書類の準備ができたら、簡易裁判所に申し立てをします。この申し立ては原則として相手方である債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に行います。簡易裁判所への申し立ても本人が行いましょう。

事件受付票の交付・調査期日の指定

次に、裁判所側から事件受付票が交付され、調査期日が指定されます。あらかじめ必要書類を用意していた場合、書類に不備がなければその日に受付してもらうことができます。特定調停の申し立て後、裁判所から債権者へ通知が発送されるまでには数日かかる場合があり、その後、調査期日と第1回期日が決まります。このとき、借金額が非常に大きく支払不能の状態である場合や資力が十分にあり特定債務者といえない場合などは特定調停の対象となるかどうかも判断されます。

調停委員の選任と調査期日の設定

次に、裁判所側が調停委員名簿に基づき調停委員を選任します。特定調停では、調停主任裁判官と原則として2名の調停委員から構成される調停委員会が担当することとなります。申し立てから約1ヵ月後に、調停委員と本人による調査期日が設定され、葉書等で通知されます。調査期日では、調停委員から申立書の内容、債務状況などを確認され、相談しながら返済計画案を作成。この時点で申し立ての取下げや調停をしない措置がとられることもあります。

調停期日

調査期日の約1ヵ月後に、調停委員と各債権者による第1回調停期日が設定され、返済計画案をもとに債権者との間で返済計画が調整されます。この調停期日で債権者の同意が得られた場合は最終的な返済計画が記載された調停調書が作成されます。しかし、債権者の同意が得られなかった場合は、調停委員会が解決のために調停条項を定めた決定をだします。あくまでも特定調停は現状を確認した上で裁判所が決定を下すというイメージです。

調停調書に従い返済

債権者が返済計画に同意した場合、その返済計画に従い借金の返済をしていきます。もし、この返済計画通りに借金を返済できなかった場合は、給料の差し押さえなどの措置が取られる場合もあり、しっかり返済することが大切です。また、債権者から異議が出された場合には、特定調停は成立せず、借金の減額ができません。特定調停ができなかった場合は直ちに他の債務整理手続へと切り替えることが必要となります。

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