「毎月のクレジットカードやカードローンの返済が厳しい」
任意整理はそのような人の救済措置で、自己破産や個人再生と同様に債務整理の手続きの一つです。現在抱えている借金の利息をカットして、その後3~5年の分割払いで返済します。
当記事では、任意整理とはどんな手続きなのかをはじめ、メリットやデメリット、手続きの流れや費用について解説します。借金の返済で将来的にどうしたらいいのか悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
年収200万円の人の場合 | 年収400万円の人の場合 |
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①(毎月の収入)約14万円-(必要最低限の生活費)約10万円=毎月の返済可能額は約4万円 ②4万円✕5年(12✕60)=240万円 240万円を超える借金額の場合、任意整理の手続きが難しい | ①(毎月の収入)約25万円-(必要最低限の生活費)約10万円=毎月の返済可能額は約15万円 ②15万円✕5年(12✕60)=900万円 900万円を超える借金額の場合、任意整理の手続きが難しい |
任意整理 | 自己破産 | 個人再生 | |
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減額の大きさ | 原則として利息のみ | 全額免除 | 5分の1程度まで減額 |
手続き期間 | 約1~4ヶ月 | 約3~6ヶ月 | 約6~12ヶ月 |
弁護士/司法書士費用 | 5万円~20万円 | 20万円~60万円 | 20万円~50万円 |
手続き後の制限 | 完済するまで新規借り入れができない | 新規借り入れが約5~10年間できない | 新規借り入れが約5~10年間できない |
財産の処分 | 不要 | 必要(生活に必要な財産を除く) | 担保権が付いた財産は処分対象。その他の財産は手元に残せる可能性がある。住宅ローン返済中の家は、担保権付きでも例外的に残せる場合がある |
保証人の影響 | 任意整理の対象から外した債務は影響なし | 保証人へ返済義務が移る | 保証人へ返済義務が移る |
周りに知られる可能性 | 低い | 高い | 高い |
返済期間 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 支払う利息 | |
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実質年率15.0%で返済した場合 | 36ヶ月 | 69,330円 | 2,495,888円 | 495,888円 |
任意整理で金利が0円になった場合 | 36ヶ月 | 55,555円 | 2,000,000円 | 0円 |
返済期間 | 毎月の返済額 | 総返済額 | 支払う利息 | |
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実質年率15.0%で返済した場合 | 36ヶ月 | 69,330円 | 2,495,888円 | 495,888円 |
任意整理で金利が0円になった場合 | 60ヶ月 | 33,330円 | 2,000,000円 | 0円 |
任意整理の対象にできる債権 | 任意整理の対象にできない債権 |
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・住宅ローン ・自動車ローン ・教育ローン ・クレジットカードのショッピング・キャッシング利用分 ・奨学金 | ・税金(所得税や法人税、住民税など) ・国民健康保険料や国民年金保険料 ・罰金(駐車違反など) ・養育費や教育費 |
信用情報機関 | 加盟企業 | 登録期間 |
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CIC(株式会社シー・アイ・シー) | ・消費者金融 ・クレジットカード会社 ・信販会社 | 完済後から5年間(2019年9月30日以前の契約の場合は登録された日から5年) |
JICC(日本信用情報機関) | ・消費者金融 ・信販会社 | 「任意整理」としては登録されない |
KSC(全国銀行個人信用情報センター) | ・銀行 ・銀行系クレジットカード会社 ・信用金庫 ・信用組合 ・農協 | 「任意整理」としては登録されない |
相談料 | 0円~30分で5,000円 |
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着手金 | 債権者1社あたり2~5万円 |
報酬金 | 債権者1社あたり1~5万円(税込) |
減額報酬 | 減額分の11%(税込) |
相談料 | 0円~30分で5,000円 |
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着手金 | 債権者1社あたり2~4万円 |
報酬金 | 債権者1社あたり1~4万円 |
減額報酬 | 減額分の11%(税込) |
任意整理をすると、保有しているクレジットカードを利用できなくなったり、解約されたりする可能性が高いです。(任意整理の対象がクレジットカードの場合は、そのカードは即時で使用できなくなります)
クレジットカードが任意整理の対象でない場合は一定期間は残せる可能性がありますが、任意整理を行った事実は信用情報機関に事故情報として登録され、加盟業者間で共有されます。その結果、カード会社が途上与信を行ったり、カード更新時の審査の結果、契約解除や利用限度額が減額されます。
任意整理後も手続き中も、新たに金融機関の口座を開設できます。これは、大手メガバンクやネット銀行関係なく、すべての金融機関において同じです。
任意整理をすると、一定期間はクレジットカードやローンなどといった信用取引の審査に通過できなくなります。信用情報機関に債務整理を行った事実が事故情報として登録されているからです。
なお、事故情報は債務整理の方法によって、信用情報機関への登録機関が異なり、任意整理の場合は5年程度です。また、事故情報登録は「完済」から5年程度であることが多い為注意が必要です。
任意整理によって居住中のアパートやマンションを追い出されることはありません。賃貸契約する方が債務整理をしたのを理由に、不動産会社や大家が退去を求める法律はないからです。
しかし、賃貸物件を新規契約する際に、信販系の賃貸保証会社が付いている場合は注意しましょう。任意整理によって信用情報機関の事故情報が登録されていると、加盟する賃貸保証会社に確認され、審査に通らない可能性があります。
車のローン返済中に債務整理を行うと、返済中の車は没収対象となるケースがほとんどです。なぜなら「所有権留保」によって、ローン会社が車を処分できるように車の所有権をローン会社に留めているからです。
債務整理をする前に車のローンを完済していたり、ローンそのものがなかったりすれば、車は債務者のものです。ローン会社に車を処分されることはありません。
預金は金融機関から銀行カードローンや住宅ローン、自動車ローン、目的ローン、フリーローン、多目的ローンなどを利用していなければ、口座凍結とならずに済みます。また、任意整理対象外の金融機関なら、銀行口座凍結の心配はありません。
任意整理は裁判所を介さずに債権者と私的に交渉し、官報などにも載らないため周囲にばれるリスクが低いです。
また弁護士・司法書士に代理を行ってもらう場合は、自宅宛ての送付書類や連絡方法なども調整してもらえる為、家族にばれる可能性も低いです。
会社は任意整理をしたことを理由に従業員を解雇できません。任意整理後も引き続き勤務できます。また、自分から退職を申し出る必要もありません。
任意整理をしたからといって、年金がもらえなくなったり減額される規定はありません。
任意整理をして信用情報機関に登録されても、戸籍や住民票に記録は残りません。
任意整理後も手続き中も、選挙権が剥奪されることはありません。衆議院や参議院といった国政選挙はもちろん、都道府県知事や市区町村長、都道府県議員や市区町村議員選挙などでも同じです。
債務整理をしても、税金の減額はできません。どんなに借金問題を抱えていたとしても、在勤の支払い義務は免除されることはありません。