太陽光発電の発電量の目安は？計算式や発電量を増やす方法を解説

太陽光発電システムにおける経済的メリットの大きさは、発電量で決まるといっても過言ではありません。発電量が多いほど、家庭での電気代削減や余剰電力による売電収入を得ることが可能です。発電量を多くするためには、太陽光発電システムを効率よく発電させる条件を満たす必要があるため、あらかじめ発電量に関する知識をもっておくことをおすすめします。
この記事では、発電量を多く得るための方法をはじめとする基礎知識とあわせて、発電量予想値の算出方法も紹介しているので、導入を検討している太陽光発電システムで得られる発電量のシミュレーションも可能です。損をしない太陽光発電システム選びのひとつの参考にしてください。

太陽光発電システムにおける発電量の基礎知識

発電量の多い太陽光発電システムほど高い節電効果と売電収入を得ることができますが、そのぶん価格が高くなる傾向にあります。太陽光発電システムを検討する際は、導入費用や得られる経済的メリットを考慮して選ぶ必要があるのです。発電量の基礎知識を学ぶことで、設置環境をふまえた具体的な発電量を算出できたり導入費用回収にかかる年数を把握できたりするので、損や後悔のない太陽光発電システム選びが期待できます。

発電量(kW)とシステム容量(kWh)とは

発電量とは、1時間あたりにどれだけの電気を作り出したかを示す電気量のことであり、kWhの単位で表されます。太陽光発電システムが、1時間あたりに実際に作り出した電気量です。一方でシステム容量と呼ばれる、太陽光発電システムでどれだけの電気が作り出せるかのスペックを示す電気量というものもあります。kWの単位で表され、kWの数値が大きいほど多くの電気を作り出すことが可能です。基本的に、システム容量が大きいほど多くの電気を作り出せる太陽光発電システムであるといえます。
システム容量は、太陽光パネルとパワーコンディショナの出力のいずれか低いほうの値で決定されます。たとえば太陽光パネルの出力が3kWでパワーコンディショナの出力が4kWの場合は、システム容量は3kWと決定されるのです。

太陽光発電のシステム容量の目安

住宅用太陽光発電システムの概算を出す場合、年間発電量だといわれている1kWあたり1,000kWhとすることが一般的です。一般的な住宅用太陽光発電システムでは、3kWから5kW程度のシステム容量が主流になっています。
たとえば4kWのシステム容量をもつ太陽光発電システムにおける発電量を計算したい場合は、1,000kWh×4kWで4,000kWh程度であると算出可能です。1日あたりに換算すると発電量は約11kWhであるため、1日の電力消費量が11kWhよりも低い場合は太陽光発電システムの発電量だけで家庭の電力を賄うことができるといえます。余剰電力分は売電することで収入を得ることも可能です。あくまで概算であるため、具体的な発電量予想を計算したい場合は、後述する計算式を参考にしてください。
システム容量が大きいほど発電量が多くなるとはいえ、固定買取価格制度(FIT)を利用して自家消費できなかった余剰電力の売電を行う場合は、システム容量を大きくし過ぎてはいけません。固定買取価格制度(FIT)では、住宅用太陽光発電のシステム容量は10kW未満であると定められているためです。システム容量を選択する際は、固定買取価格制度(FIT)の制限である10kW未満と主流である3kWから5kWを目安に検討することをおすすめします。

太陽光発電における発電量予想の計算式

太陽光発電システムは、システム容量から導き出した通りの発電量が得られるわけではありません。理由は、日射量や太陽光発電システムにおける損失(システムロス)などによって発電量が変化するためです。計算する際は、以下の計算式に数値をあてはめて発電量予想値を算出します。
年間予想発電量=システム容量×年平均日射量×0.73(損失係数)×365(日)÷1
年平均日射量は、気象庁のホームページなどで確認可能です。損失係数には、太陽光パネルの温度上昇やパワーコンディショナによる損失にくわえて、配線や受光面の汚れなどによる損失が含まれます。数値の0.73%は、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が算出した数値であり、トータルの損失量として使われることが一般的です。実際には、太陽光発電システムのメーカーによる違いや設置の仕方などで損失係数は異なるため、あくまで目安の数値だといえます。

太陽光発電の発電量に影響を与える要素

発電量は常に一定ではなく、1日のなかでも刻々と変化していきます。発電量に影響を与える要素を理解しておくことで発電量の少ない季節や時間を考慮した、より具体的な太陽光発電システムの発電量をシミュレーションすることが可能です。

発電量に影響を与える要素1. 太陽光の日照時間

太陽の日差しを浴びて発電する太陽光発電システムでは、日照時間が長いほど発電量は多くなります。言い換えれば発電量は季節によって変わるだけでなく、天候によっても左右されるのです。
地域によって異なりますが、12月の冬至あたりは日照時間が短いため発電量は少なく、6月末の夏至あたりは日照時間が長いため発電量は多い傾向にあることが一般的です。天候においても晴れの日の発電量を100とした場合、曇の日は50程度で雨の日は20程度と発電量が大きく異なります。

発電量に影響を与える要素2. 日射量

日射量とは、一定時間に太陽から降り注いでくる光エネルギーの総量のことです。太陽光発電システムは、太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換するため、日射量の多さも発電量に影響を与えます。太陽光発電システムは日の出とともに稼働し、正午ごろをピークに発電量が伸びていくケースが一般的です。とくに日の出が遅く日の入が早い冬は、全体的に日射量とともに日照時間が少ない傾向にあるため電気量は低くなります。

発電量に影響を与える要素3. 太陽光パネルの温度

太陽光パネルの内部はシリコンと呼ばれる半導体でできているケースが大半であり、シリコンは高温になると性能が低下する特徴があります。太陽光パネルの発電効率は表面温度25度で最大となるとされており、25度より高かったり低かったりすると発電効率が落ち、発電量も低下することが一般的です。
たとえば真夏のように外気温が40度を超えた場合、太陽光パネルの表面温度は70度から80度に達することも少なくありません。太陽光パネルの表面温度が1度上がるごとに発電効率は0.4%程度減少するといわれているため、温度によって発電量は10%から20%程度低下するものだと認識しておきます。温度上昇による発電量の低下を最小限に抑えたい場合は、温度変化に強い太陽光パネルを選ぶのもひとつの手です。

太陽光発電システムの発電量が低下する原因

太陽光発電システムの発電量を計算する際、損失係数である0.73%を考慮します。損失係数とは発電量を下げる要因であり、必ず損失(システムロス)は発生するものです。どのような原因で損失が発生するかを把握しておくことで、太陽光発電システムを効果的に使用することが期待できます。

太陽光発電の発電量が低下する原因1. 気温

太陽光パネルの公称最大出力は、太陽光パネルの表面温度が25度の環境下で測定された数値です。太陽光パネルは熱に弱い特徴があり、気温が上昇して表面温度が上がるごとに発電量が低下します。とくに夏場などは温度が上がりやすいため、損失係数も大きくなるのが一般的です。

太陽光発電の発電量が低下する原因2. パワーコンディショナ

パワーコンディショナは太陽光発電システムによって作り出した直流電気を、住宅で使える交流電気に変換する役割を担う機器のことです。変換時にも損失がうまれ、パワーコンディショナが発電量に影響を与える損失係数は約5%程度といわれています。

太陽光発電の発電量が低下する原因3. パネルの汚れや傷

太陽光を受光することになる太陽光パネルの汚れや傷は、発電量の損失を生み出します。鳥のフンなどで汚れたり落ち葉によって影ができたりした場合でも、発電量が低下するため注意が必要です。多くの場合において汚れは雨によって流されますが、飛来物などによってできた傷による損失は修理しなければ回復しません。

太陽光発電の発電量が低下する原因4. 経年劣化

太陽光発電システムは少しずつ経年劣化していき、経年劣化とともに発電量が低下する傾向にあります。アメリカの国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が発表したデータによると、太陽光パネルの経年劣化率は年間で0.5%程度です。太陽光パネルの素材によって損失係数は異なりますが、少しずつ発電量は低下していくものだと考えます。
参考： 国立再生可能エネルギー研究所(NREL)/STAT FAQパート2:PVパネルの寿命

太陽光による発電量を増やす方法

太陽光発電システムは太陽の日差しがなければ稼働することはありません。経済的メリットを多く得るためには、太陽光パネルの発電効率を高めてより多くの発電量を引き出す工夫が必要です。以下を参考に、太陽光発電システムを効果的に使いましょう。

発電効率のよい太陽光パネルを選ぶ

発電効率は変換効率とも呼ばれており、太陽光エネルギーをどれくらい電気エネルギーに変換できるかを示した数値を指します。太陽光パネルによって発電効率は異なりますが、20%前後であることが一般的です。発電効率の数値が高いほど多くの電気エネルギーを作り出すため、発電量を多くしたい場合は20%前後を目安に高い発電効率をもつ太陽光パネルを選ぶとよいといえます。

太陽光がより当たる場所にパネルを設置する

発電量を増やしたい場合は、太陽光をできるだけ多く受光できる場所に太陽光パネルを設置します。影がない場所だけでなく、日射量は屋根の向きに影響を受けるため屋根の向きを意識するとよいです。
もっとも発電量を増やせるのは屋根が真南を向いている場合であり、真南からずれるほどに発電量は下がる傾向にあります。南東から南西の間であれば、4%程度にしか日射量に差は生じないといわれているため、南東から南西の向きでの設置もおすすめです。北の方角はもっとも日射量が少ないので、可能な限り避けるようにしましょう。
あわせて注意したい点として、太陽光パネルの設置角度も発電量に影響を与える要素であることがあげられます。太陽光パネルの理想的な設置角度は、太陽が真南の方角でもっとも高い位置にある時点における水平線との角度が30度の位置です。太陽光パネルを設置する際は、多くの発電量が得られる角度で設置する必要があるため、設置場所での実績を豊富にもち、太陽光発電システムに詳しい業者を選ぶようにします。
参考： 太陽光発電協会/よくあるご質問

パワーコンディショナの容量を大きくする

パワーコンディショナの容量と太陽光パネルの容量を比較した際、パワーコンディショナの容量のほうが大きい場合に限り、太陽光パネルの追加や変更によって発電量を増やすことが可能です。過積載と呼ばれる設計方法であり、全体の発電量を増やす効果があるとして利用されます。
パワーコンディショナの役割は、作り出した電気エネルギーを家庭などで使える電力に変換することです。最大出力はもっとも日射量の多い時間に設定されており、朝や夕方などは最大出力に届かずに発電量が落ちます。太陽光パネルの容量をパワーコンディショナの容量よりも大きくする過積載の方法をとることで、全体の発電量を底上げすることが可能となるのです。
注意点として、パワーコンディショナの容量を超える電気が太陽光パネルで作り出された場合、処理しきれずに電気を捨てることがあげられます。一見すると損に思えますが、太陽光パネルの発電量がピークに達するのは1日でもわずかな時間に限られているため、捨てる量は多くはありません。過積載の方法をとることで発電条件がよくない悪天候の日や、発電量の少ない朝夕の発電量が多くなるため、総合的にみると発電量を増やすことが可能です。

設置後も太陽光による発電量を低下させない方法

多くの太陽光パネルメーカーの出力保証は15年から25年程度で、太陽光発電システムの期待寿命は30年程度といわれています。出力保証や期待寿命からみると、発電効率は落ちにくく発電量も維持されやすいと考えられますが、少なからず経年劣化は起こるものです。出力保証期間内であっても、発電量を低下させないように対策しておくことをおすすめします。

太陽光発電の定期点検を行う

定期点検を行うことで、故障をはじめとする発電量低下の要因を防止することが期待可能です。定期点検は2017年度に施行された、「再生可能エネルギー特別措置法の一部を改正する法律(改正TIT法)」によって、50kW未満の太陽光発電システムのメンテナンスが義務化されています。住宅用太陽光発電システムでは設置1年後は4年に1度保守点検の実施が必要であり、費用は1万円から3万円程度です。定期点検を行うことで、太陽光発電システムの故障による損害を抑えるだけでなく、老朽化などによる第三者への損害や発火リスクも抑えることができます。

太陽光発電のメンテナンスを行う

太陽光パネルをはじめとする太陽光発電システムのメンテナンスを行うことも、発電量を維持する効果が期待できる要素のひとつです。とくに太陽光パネルは雨跡やゴミが付着しやすく、汚れなどによる日射量減少が発電量の低下を引き起こす原因となり得ます。洗浄などによるメンテナンスを受けることで、発電量を維持することが可能です。
太陽光パネルのなかには、汚れにくくするための水切り加工が施してある製品もありますが、設置場所の環境や自然災害で汚れてしまうケースも少なくありません。設置業者に相談したり発電量をチェックしたりするなどして、メンテナンスの実施時期を判断するとよいです。

発電量データでシステムの状態を確認する

計測モニターと呼ばれる、発電量や発電効率を確認できる設備を設置している場合、発電量のデータを記録することで発電量を維持しやすくなります。月ごとの平均発電量を記録しておくことで前年度の発電量と比較することが可能となり、発電量の低下に速やかな対処ができるためです。発電量の比較データがあることで修理業者も状況がわかりやすいうえ、メーカー保証によって修理する際にも不具合の説明がしやすくなります。

太陽光発電システムの発電量が低下した場合の対処法

発電量は前述したとおり、天候や日照時間の長さなどの要因で増減します。天候などが原因だといえないほど極端に発電量が低下している場合は、発電量が減少した原因を探らなければなりません。スムーズに対処するためにも、発電量の低下を疑う根拠となるデータは重要であるため、月ごとの発電量は記録しておくとよいです。

原因を業者に確認してもらう

発電量が低下した場合、太陽光発電システムの点検を業者に依頼して原因を突き止めます。屋根に設置されるケースが多い太陽光パネルの点検には危険が伴うため、自身で点検せずに業者に任せるとよいです。点検を依頼する業者を探す際は、太陽光発電システムの設置を依頼した業者の点検保証や点検サービスの有無もあわせて確認することをおすすめします。お得に点検を依頼できたり、設置した状態との変化が判明したりすることも考えられるためです。

メーカー保証の対象かを確認する

太陽光発電システムの保証書を用意して、発電量が低下した原因や修理内容がメーカー保証の対象であるかを確認します。たとえば出力保証では保証期間中において一定水準の発電効率が保証されているため、無償もしくは低価格にて修理を依頼することが可能です。保証書を紛失した場合は保証が受けられないケースが多いため、保証書は大切に保管するようにします。万が一紛失した場合は、保証書の再発行が可能であるかどうかを速やかにメーカーへ問い合わせるとよいです。

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まとめ

太陽光発電システムで経済的なメリットを得たい場合は、発電量を多く得る必要がありますが、発電量の多い太陽光発電システムは導入費用が高くなります。具体的な発電量を計算することで、家庭で消費する電力と売電収入が得られる発電量をもつ太陽光発電システムを選択でき、可不足なく活用することが可能です。
注意すべきは設置環境やシステムの状態で発電量が増減する点であり、太陽光発電システムがもつシステム容量を最大限に活かす工夫を施すようにします。定期的に発電量をチェックして、発電量低下に速やかに対処できるようにするとよいです。

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