東北唯一の中央競馬場である福島競馬場は福島県の県庁所在地である福島市に位置し、北へも南へもアクセスのよいところにあります。風光明媚で自然に恵まれ、相馬のような古くから馬の生産地として名高い土地からもほど近い福島で競馬が栄えたのは必然といってよいでしょう。競馬ファンにとっては、中央4場とは異なる小回りなコース設計が予想外のレース展開を生む馬券妙味のある競馬場としても知られています。
今回は、2011年に東北を襲った未曽有の大災害も乗り越え、競走馬の力強い走りとともに傷ついた人たちに生きる気力を与え続けている福島競馬場の魅力をお伝えしていきます。
目次
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力強い生命力を育む東北魂の福島競馬場
福島競馬場の前身は静岡県の藤枝競馬倶楽部。福島競馬倶楽部が移転の形で公認競馬を誘致した結果、1918年に建設されました。1929年には日本競馬史上唯一となる、全島落馬によるレース不成立というアクシデントも起こっています。戦時中は1943年から休場、戦後も食料難対策として農場として使用されたのち、1949年にようやく再開することができました。
それから62年。福島競馬場を再び巨大な困難が襲いました。2011年3月11日に起こった東日本大震災です。福島競馬場は地震によって大きなダメージを受けたうえ、事故を起こした福島第一原発からは100キロも離れていない距離だったことから深刻な放射能汚染も受けました。当然競馬開催どころの状態ではなく、休場を余儀なくされています。
その後破損した施設の修復や、放射性物質の除染のための芝生の張替え、ダートコースの砂の入れ替えなどの復旧工事を終えた1年後の2012年4月7日、再び福島競馬場は動き出しました。今なお被害から完全に立ち直ったわけではなく、復興が続く福島。そのなかにあって、福島競馬場は地域の人々に勇気を与え続けています。
福島競馬場のコース特徴：芝と勾配がドラマを生むコース設計
芝コースは全長1600mと、JRA全競馬場の中で1周距離がもっとも短いものです。高低差や勾配は厳しいものではありませんが、コースを1周する間にアップダウンを2回繰り返す起伏構成となっています。4コーナーから最終直線にかけても下り勾配となっているうえ、第3〜第4コーナーがスパイラルカーブとなっているのでスピードが落ちにくく、ハイスピードな最終局面を演出しています。
要注意なのは夏開催時の馬場の状況。梅雨の季節とまともに重なってしまうスケジュールなので、改善が進んだ昨今は昔ほどの大影響はなくなりつつありますが、濡れた重い状態となっていることがしばしばあります。予想する際に決して無視することのできない大きな要素の一つです。
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福島競馬場の主な重賞レース
福島競馬場ではGIIIレースが4レース開催されています。毎年4月、7月、11月の3回開催され、このうち7月は東日本地区の主場開催とされています。
福島牝馬ステークス
開催時期：4月下旬の土曜
芝1800メートル
福島牝馬ステークスは牝馬の出走機会を広げる試みの一つとして2004年に創設された新しいレースです。2006年にGIヴィクトリアマイルが創設されるとその前哨戦として位置づけられ、2014年からは福島牝馬ステークスの優勝馬にヴィクトリアマイルの優先出走権が与えられています。
ラジオNIKKEI賞
開催時期：7月初旬の日曜
芝1800メートル
ラジオNIKKEI賞は1952年にGI皐月賞の前哨戦として中山競馬場で創設されました。1955年から1967年まではGI東京優駿（日本ダービー）の優勝馬は出場できないという珍しいルールがあったことでも知られています。1979年に福島競馬場開催に変更され、現在にいたるレースです。
七夕賞
開催時期：7月7日前後の日曜
芝2000メートル
1965年に創設された七夕賞はその名の通り、七夕前後に行われる重賞レースです。とはいえ開催時期が7月に固定されたのは1980年からで、創設時には8月開催、一時期は10月に開催となって名称も東北記念に変更されていた歴史を持ちます。なお、ターフビジョンの裏にあるローズガーデンは七夕賞にちなんで「天の川」を模してデザインし、2013年の春に造成されたものです。
福島記念
開催時期：11月中旬の日曜
芝2000メートル
福島記念は1965年に創設された3歳以上の馬によるGIIIレースです。創設当初は8月開催でしたが1974年以降は11月開催として定着し、福島競馬の1年を締めくくるレースとして親しまれています。
福島競馬場の設備：ファンの利便性を追求
パドックと一体化したスタンド
6階建てのスタンドは1階から3階が一般席とシニア席、4階が指定席とシニア席、5階が馬主・貴賓席と指定席、6階は業務区域となっています。道路を挟んだ向かいに立体駐車場があり、そこから連絡通路でスタンド2階に入ることができます。また、2階以上は全エリアガラス張りとなっており、快適な気温で観戦することができる環境が整っています。
福島競馬場のスタンドの一番の特徴はパドックがスタンド2階にあること。出走前の競走馬の様子をスタンドからも眺めることができます。スタンドから出ずにパドックを気軽にチェックでき、忙しいレースの合間の手間を削減することができるはずです。
指定席の豊富な選択肢
福島競馬場には4階にA・B指定席、ラウンジ席と指定シニア席を、5階にC指定席が設けられています。なお、料金に入場料の100円は含まれていません。
A指定席
スタンド4階
料金：1,500円
全席にコンセントとデスク、2席ごとにモニターが1台付いたA指定席はゴールの目の前に位置しており、ゴール前の最後の攻防をしっかりと見届けることができます。
B指定席
スタンド4階
料金：1,000円
A指定席同様全席にコンセントとデスク、2席ごとにモニターが1台付いたB指定席はゴールより手前、第4コーナーから最終のストレートにかけたコースの前に位置しています。
C指定席
スタンド5階
料金：500円
B指定席の上に位置するC指定席にはモニターはありませんがコンセントとデスクは全席に備えられており、スマホやラップトップを駆使して情報収集しながら競馬を観戦できます。
ラウンジ席
スタンド4階
料金：3,000円（6人まで入場可能）
ゴールの先に位置するラウンジ席は6人掛けのテーブル席となっており、グループでの利用に最適です。
シニア指定席
スタンド4階
料金：無料
65歳以上の方は3階26番柱にあるシニア受付において当日先着順で受け付けることで、4階にあるシニア指定席を無料で利用できます。当日年齢を証明するものを持っていくことをお忘れなく。
競馬の歴史に酔うメモリアルコーナー
スタンド1階にあるメモリアルコーナーには、福島競馬場で無類の強さを誇った伝説の騎手・増沢末夫を記念した展示がされています。ハイセイコーの主戦騎手として第1次競馬ブームを担い、44歳にして初の全国リーディングジョッキーを獲得。1987年には競馬関係者として初めて皇室主催の園遊会に招待され、そして1990年には中央競馬初の2000勝を達成しました。競馬界を長年にわたって強くけん引し、今の繁栄を築き上げた功労者の1人です。
増沢騎手はローカル開催に強く、特に福島競馬場で無類の強さを誇りました。同競馬場だけでなんと671勝も挙げており、福島競馬場は「増沢の庭」と呼ばれたほど。メモリアルコーナーで増沢騎手ゆかりの品々を眺め、鉄人と呼ばれたジョッキーの往年の活躍に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
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便利な自動車専用販売所
福島競馬開催日以外のみ利用可能となりますが、スタンドの地下1階には自動車専用販売所があり、専用の入り口から自動車でそのまま販売所まで入ることができます。発売窓口と払戻所、それからトイレも完備しており、通りすがりにトイレ休憩のついでにでも利用できる便利さがうれしい設備です。発売単位は3連単のみ100円単位で、それ以外は500円単位となります。
福島競馬場のグルメ：地元の名産を集結
喜多方ラーメン
福島のグルメ、と聞いて真っ先に名前が挙がるのはやはり喜多方ラーメンでしょう。札幌ラーメン、博多ラーメンと並ぶ日本三大ラーメンの一つに数えられ、日本中に店舗が広がっています。福島競馬場では、スタンド1階のファストフードプラザに入店している赤井でその味を楽しめます。あっさりした醤油豚骨の芳しいスープが食欲を大いにそそる一品です。
みちのく福島路ビール
福島競馬場を訪れる人たちを魅了してやまないのがみちのく福島路ビールです。ピルスナー、ヴァイツェンといった定番から、桃を使ったピーチエール、福島県産米「ひとめぼれ」に県オリジナル清酒酵母「うつくしま夢酵母」を使った米麦酒「マイビール」といったオリジナル性あふれる商品が大人気。飲み比べをすることもでき、白熱する競馬観戦の最高のお供といえるでしょう。
鳥ぎんのモツ煮
スタンド1階のファストフードプラザにある鳥ぎんのもつ煮は福島競馬場の名物の一つ。多くの競馬ファンが福島競馬場のナンバー1グルメにその名を上げるほどです。大きな鍋でじっくりと煮こまれたもつは柔らかく、ごろっとした大根にも味が染みてほくほく。冬はもちろん、暑い夏でもついつい食べたくなる滋味に富んだ一品です。
福島競馬場へのアクセス：関東と東北をつなぐ好アクセス
福島競馬場の最寄り駅はJR福島駅。福島県のターミナル駅で、JR東日本の新幹線・在来線各線と、阿武隈急行の阿武隈急行線、福島交通の飯坂線が乗り入れています。関東方面からも東北方面からもアクセスが良い立地といえます。
JR福島駅からは東口バスターミナル2、3番のりばからバスで約15分、「競馬場前」下車です。仙台、郡山・会津若松・相馬等からも福島競馬場前まで福島交通のバスが運行しています。
福島競馬場のまとめ
戦争も、大地震も、大津波も、放射能も乗り越えて力強く生き続ける福島競馬場。今なお福島の復興は続いていますが、必ず福島は甦ると確信することができる生命力の強さをこの福島競馬場で感じることができるでしょう。あの天災以降、福島というと災害のイメージが付きまとってしまっていますが、もともと福島は自然の恵みに富んだ素晴らしい土地です。ぜひ福島競馬場を訪れ、忘れられてしまいつつある福島本来の魅力を再確認してみてはいかがでしょうか。
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