【伝統芸能】歌舞伎舞踊入門！初心者向け基礎知識をご紹介

歌舞伎におけるジャンルの1つとして、演劇と踊りを様式化した演目が楽しめる「歌舞伎舞踊」。七代目市川團十郎が数年の歳月をかけて書き上げた『勧進帳』（かんじんちょう）をはじめ『京鹿子娘道成寺（きょうがのこむすめどうじょうじ）』や『連獅子』（れんじし）、『富士娘』（ふじむすめ）、『黒塚』（くろづか）など数多くの名作が誕生し、尾上菊五郎や坂東玉三郎などをはじめとする名優により今もなお上演されています。
今回はそんな歌舞伎舞踊の基本的な情報から歴史について、注目の名優から演目、歌舞伎座の楽しみ方などについてまとめました。

歌舞伎舞踊とは？意外に知らない基本情報を見てみよう！

歌舞伎舞踊とは歌舞伎におけるひとつのジャンルで、演目に含まれる劇中舞踊のこと（もしくはそれが独立した形の舞踊のこと）をいいます。芸能としての歌舞伎舞踊は日本の重要無形文化財にも指定されており、演劇と踊りを美しく様式化し、幅広い演目にその姿を見ることができます。
歌舞伎舞踊を演じるのは歌舞伎役者と日本舞踊家で、演者それぞれの技術や個性、小道具や衣装などさまざまな要素が組み合わさって歌舞伎舞踊を盛り立てます。技法としては人形の身振りを行う「人形振り」や、華やかさを演出する「所作ダテ」、衣装の演出の工夫として「引き抜き」「ぶっかえり」などがあります。そこに演者の「袖使い」「扇、手ぬぐいの表現」などが加わり歌舞伎舞踊が出来上がります。

歌舞伎舞踊を始めた人って？気になる創始者「出雲の阿国」について

歌舞伎舞踊は歌舞伎の歴史にその源流をたどることができます。歌舞伎は出雲の阿国（いづものおくに）という女性がその時代に流行していた念仏踊りを工夫して創始したといわれる「かぶき踊り」を踊ったことが始まりです。
出雲の阿国は出雲大社の巫女であると称していましたが詳細は分かっていません。1603年、京でかぶき踊りを演じたとされており、かぶき踊りで人気が出た頃には京の北野神社の境内に専用の舞台をつくり本拠地としており、江戸城内でも踊ったという記録も残されています。彼女のかぶき踊りが源流となって歌舞伎が生まれ、のちに歌舞伎舞踊が誕生することとなりました。

いつからあったの?歌舞伎舞踊の歴史をたどってみた！

出雲の阿国によって踊られた「かぶき踊り」は、やがて人気を博すようになり踊りの最後には観客も入り乱れて踊ったといわれるほどの熱狂ぶりでした。
出雲の阿国のかぶき踊りが人気を博すようになると、さまざまな場所で取り入れられるようになり遊女たちの「遊女かぶき」や女芸人による「女かぶき」、未成年男子による「若衆かぶき」が次々と流行するようになりました。
しかし、風紀が乱れることを危惧した幕府によって禁止され、成年男子による「野郎かぶき」に移り変わります。野郎かぶきが定着するようになると演劇性のある「歌舞伎舞踊」が誕生。現代にいたるまで幅広い作品の数々が上演されています。

いま有名な「七代目　尾上菊五郎」さんてどんな人？

歌舞伎舞踊のなかでも『京鹿子娘道成寺』は、現在に伝わる歌舞伎舞踊を代表する豪華絢爛な演目のひとつです。「白拍子花子」（しらびょうしはなこ）を当たり役とする代表的な俳優として挙げられるのが尾上菊五郎（七代目）といえるでしょう。重要無形文化財保持者（人間国宝）として女方、立役ともに幅広く演じ数多くの当たり役があることで知られています。
歌舞伎舞踊の頂点と称されることもある『京鹿子娘道成寺』は舞の品格および華麗さ、1時間以上にものぼる時間を踊りきる体力に加えて高度な技術が必要とされており、七代目尾上菊五郎をはじめ、歌舞伎舞踊の流麗さを現代に伝える演目になっています。

これであなたも歌舞伎舞踊マスター！注目の松羽目物をご紹介

歌舞伎舞踊は役柄や題材によって分類されていますが、なかでも題材による分類のひとつ松羽目物（まつばめもの）は今日の歌舞伎舞踊の代表的な演目を多く含みます。
松羽目物は能や狂言をもとにした作品で松を描いた舞台装置を背景に踊る演目をいいます。江戸時代に格調が高かった能楽の要素を取り入れて、歌舞伎の地位を向上させる目的で誕生しました。皮切りとなったのは、七代目市川團十郎が数年の歳月をかけて書き上げ、天保11（1840）年に初演された『勧進帳』。明治以降は『土蜘蛛』（つちぐも）や『船弁慶』（ふなべんけい）、昭和にかけて二代目市川猿之助によって『黒塚』などの近代的な演出を試みた松羽目物が創られ、今日も歌舞伎舞踊を代表する演目になっています。

歌舞伎舞踊の代表的な演目の一部をご紹介します！

歌舞伎舞踊のなかでも女方の舞踊のひとつ『京鹿子娘道成寺』は高度な技術と芸の力を要する代表的な演目です。大蛇と化した女が愛する男を殺した道成寺伝説をもとに創られた作品ですが、物語の展開を期待して楽しむというよりも、歌舞伎舞踊を代表する演目ならではの舞の華麗さや、1時間以上を一人で踊りきる踊り手の高度な技術・踊りそのものを楽しむのが鑑賞のポイントとなります。
松羽目物の先駆けとなった演目『勧進帳』は歌舞伎十八番のひとつ。関所を通れるのか、通れないのか、逃避行を続ける源義経の緊張感あふれた名場面が続く作品です。手に汗握る冨樫と弁慶の山伏問答、クライマックスの弁慶の飛び六方（とびろっぽう／手足を大きく振りながら歩く演技）などが見せ場となっています。

マナーや気をつけることは？初心者必見の歌舞伎座の楽しみ方

歌舞伎座ではだいたい午前11時から3時半頃までの昼の部、午後4時半から9時頃までの夜の部の2部構成が基本です。東京の歌舞伎座では6月、8月は3部構成にして第3部が午後6時15分から始まる形態で興行されており、仕事のある方でも鑑賞しやすくなっています。
チケットを購入する際に初心者の方におすすめの席は諸説ありますが、いきなり15,000円以上の一等席で鑑賞するより、3階席（A席6,000円、B席4,000円）がおすすめ。舞台からの距離はありますが全体を上から俯瞰して見ることができ、豪華絢爛な舞台そのものを楽しめます。また好きな演目を1つだけ鑑賞できる当日券の「一幕見席（1,000～2,000円）」もありますが、舞台からの距離が遠く人気公演では当日長時間並ぶこともあります。
鑑賞の際には特にドレスコードはなく、デニムなどのカジュアルなものでも大丈夫です。桟敷席は服装も着物などきちんとした方が多いので、周りから浮かない程度にコーディネートするといいでしょう。

まとめ

歌舞伎が成立する長い歴史のなかで派生した、歌舞伎の1ジャンル・歌舞伎舞踊について紹介してきました。演者の技術や芸の力、役柄そのものの個性、場面や役柄ごとに美しく装飾された衣装や小道具などの要素が組み合わさって歌舞伎舞踊の世界が創り上げられています。
演劇性を持つ舞踊として現代にいたるまで数々の作品が誕生し、今もなお多くの作品が名優によって上演されている歌舞伎舞踊。一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。

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