【伝統芸能】旋頭歌・片歌入門！知って楽しい日本の伝統文化

伝統芸能から最先端の技術まで、日本は世界の中でも何かと注目を集める存在です。
伝統芸能といっても、あまりに漠然としています。具体的にどのような伝統的な芸能が日本という国を特徴づけているのか、気になるところですよね。
そこで今回は、新元号「令和」の出典となった日本最古の歌集『万葉集』が近年ブームとなっていることに因んで、『万葉集』中に収録されている和歌、その中でも特に旋頭歌・片歌に焦点を当てて、発祥やルールなどの基本的な情報から詠み方のポイントまで、総合的にご紹介したいと思います。
旋頭歌・片歌に関する情報は非常に少なく、日常生活で触れる機会もほとんどないため、この記事を参考に、旋頭歌・片歌の世界を覗いてみてはいかがでしょうか。

旋頭歌・片歌とは？意外に知らない基本情報を見てみよう！

片歌（かたうた）とは、古代歌謡の一つで、「五七七」の3句、計19音からなる歌をいいます。この片歌を2首合わせたものが旋頭歌（せどうか）と呼ばれるものです。
旋頭歌は五七七の片歌を2回繰り返した6句から成り、上3句と下3句とで詠み手の立場が異なるものが多く、五七七の片歌を2人で唱和または問答したことから発生したといわれています。つまり、片歌は、それだけでは不完全な形で、片歌が2つ集まってはじめて完成形ということになります。
全20巻から成る『万葉集』には4500首以上の和歌が収められており、そのうち旋頭歌は62首、『万葉集』以外では『古事記』に2首、『日本書紀』に1首、『琴歌譜』に1首、『古今和歌集』『拾遺和歌集』『千載和歌集』などに数首が収録されています。

旋頭歌・片歌を始めた人って？気になる創始者について

旋頭歌の作者として明らかなのは、山上憶良、大伴坂上郎女、大伴家持、高橋虫麻呂などで、作者未詳のものが多数を占めています。旋頭歌は、もともとは神と人との問答を原型にした古い旋律の歌といわれており、旋頭歌の創始者を特定することは難しく、民謡形式の一つだと推測されています。
思わず口から出る感情を五七七で表現したものが片歌で、その片歌に五七七の片歌で返したものが組み合さって旋頭歌になりました。つまり、旋頭歌は、短歌が独詠（一人で歌を詠むこと）を基本とするのとは違い、複数の人々によって詠まれるものであることから、必然的に集団での歌謡としての色合いが濃くなります。ゆえに、何らかの神事や市で人々が集まり、自然発生的に詠まれたと考えるのが自然です。

いつからあったの？旋頭歌・片歌の歴史をたどってみた！

旋頭歌・片歌を含む和歌の始まりは古代の歌謡に遡り、古の日本において和歌は、心情を的確に表現する手段として日常的に用いられていたといわれています。
旋頭歌は奈良時代に広く詠まれていたといわれており、明治時代以後、万葉調の復活を唱えた正岡子規、窪田空穂らによって、旋頭歌の歌体を源流とする混本歌が作られましたが、定着することはなく、旋頭歌は次第に詠まれなくなりました。
今日の日本では「和歌」といえばもっぱら「短歌」を指し、旋頭歌・片歌といった形式のものを知っている人自体、少なくなってしまいました。

最も優れた万葉歌人「柿本人麻呂」てどんな人物？

『万葉集』を代表する歌人は何人もいますが、最も優れた万葉歌人となれば、多くの方が「柿本人麻呂」というのではないでしょうか。
『万葉集』は長い時代にわたって様々な階層の人の歌を収録しており、歌の形式には自ずから変遷が見られます。柿本人麻呂はこの『万葉集』時代の丁度中間の時期に現われ、人間味あふれる感情で、今なお時代を超えて人々の心を打つ歌を残しました。
『万葉集』に収録されている旋頭歌は62首といわれていますが、その大半は『柿本人麻呂歌集』と『古歌集』からもってきたものといわれています。

これであなたも旋頭歌・片歌マスター！注目の和歌をご紹介

旋頭歌を作る上で堅苦しいルールはありません。「五七七（片歌）・五七七（片歌）」といったように、決まった音数の句を、決まったパターンで組み合せること以外に、特段決まりごとはありません。代表的な旋頭歌として挙げられるのは、『古事記』に記されている神武天皇の妻問いのときの大久米命と伊須気余理比賣との問答歌です。
あめつつ　千鳥(ちどり)ましとと　などさける利(と)目(め)　
媛女(をとめ)に　直(ただ)に遇(あ)はむと　吾(わ)がさける利目
下段の片歌は上段の片歌に対応して歌われていることがポイントです。この二つが合わさって旋頭歌と呼ばれます。

初心者向け旋頭歌・片歌を理解するためのポイント

「五七七」の片歌を2回繰り返し、頭句（第一句、すなわち「五」）を再び旋（めぐ）らすことから、この形式の歌を旋頭歌と呼ぶようになりました。
そんな旋頭歌には詠み方のポイントがいくつかあります。
うちわたす をち方人に もの申す我 そのそこに 白く咲けるは 何の花ぞも
現代語訳：私はそちらの遠くにおられる方にお聞きしたい。それそこの白く咲いている花は、何という花なのか。
「五七七」が2回繰り返され、はっきりと2つに分かれていることが分かります。上3句と下3句に連続性を持たせるというよりは、むしろ「五七七」で一旦詠い終えてから、あらためて「五七七」で始めると考えるとよいでしょう。

初心者向け旋頭歌・片歌を詠む際のマナー、気をつけること

旋頭歌・片歌を詠む際のマナーですが、俳句のように、季節を表す言葉を入れなくてはいけないというような縛りはありません。あくまでも唱和や問答が発祥といわれている旋頭歌・片歌は、感じたことや思ったことなどを自由に表現するものであり、堅苦しく考えなくても大丈夫です。
あるのは、「五七七（片歌）・五七七（片歌）」で作るといった基本的なルールだけ。自分から発信したいちょっとした事柄や想いなどを、この38音に込めて表現してみませんか？最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、決して難しいものではありませんよ。

初心者向け旋頭歌・片歌のおすすめの参考書籍

なじみが薄いかもしれませんが、短歌や長歌に次いで歌数をもつ旋頭歌。ここでは、旋頭歌・片歌に興味のある方や、これから勉強したいと考えている初心者の方におすすめの本をご紹介します。
2015年2月に発売された『よみたい万葉集』の中では旋頭歌について、基本的なことから周辺の豆知識まで、初心者にも分かりやすく解説しています。入門書なので、基本的には読みやすさを追求した内容となっていますが、もう少し踏み込んで知りたい方にとっても十分に読み応えのある一冊です。文字通り、『万葉集』を楽しんで勉強することができますよ。

初心者向け旋頭歌・片歌の体験、投稿発表できるところ

旋頭歌は、もともとは上3句と下3句で問答する歌として詠まれていたため、上の句も下の句も同じ「五七七」がとられています。しかし、現代の日本においてはその意味は失われ、特殊な歌体の歌として残されているに過ぎません。現に5句31文字の短歌に収まりきらないものを詠む際の選択肢として旋頭歌が詠まれることもあるそうです。
毎年、産経新聞社や各地方自治体、新日本歌人協会などの機関が主催するコンテストでは自由スタイルの和歌や俳句、詩などの作品を公募しています。この他にもインターネットを介してプロアマ問わず自作の歌を投稿できるサイトがあります。
詠んだ歌を皆さんに見てもらうのも、一つの楽しみ。このような場を活用してみてはいかがでしょうか。

初心者向け旋頭歌・片歌の代表的歌人「柿本人麻呂」ゆかりの土地

旋頭歌・片歌を語るにあたって柿本人麻呂を避けて通ることはできません。ここでは、そんな柿本人麻呂ゆかりの土地をご紹介していきましょう。
近年、全国の多くの万葉ファンから注目さている柿本人麻呂ゆかりの土地といえば、江津市（島根県）。石見の国の国司を務めたといわれている柿本人麻呂が妻をめとり、過ごしたといわれている江津には、多くの歌や伝説が伝えられ、万葉の歌碑が五基あります。
日本の和歌史上初の叙情歌は、柿本人麻呂がここ石見の国で詠んだ「石見相聞歌」といわれています。江津には柿本人麻呂が生きた時代とあまり変わらない風景が広がり、訪れる人々は古代相聞歌の世界に誘われることでしょう。

まとめ

旋頭歌・片歌について発祥やルールなどの基本的な情報から詠み方のポイントまで、簡単にご説明してきました。
昨今、新元号「令和」の出典となった日本最古の歌集『万葉集』がブームになっていることはご存知でしょうか。
『万葉集』に収録されている歌は全部で4500首以上。そのうちの62首が旋頭歌といわれています。和歌の中でも短歌とは異なり、研究対象としてもあまり注目されていない旋頭歌や片歌ですが、歌人それぞれの個性を知ったり、歌の背景を知ることで、次第に面白みを見出していくことができます。
一過性の万葉ブームで終わってしまうのはもったいない！この機会に、万葉の世界に一歩踏み込んで、楽しんでみてはいかがでしょうか。

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